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Column

2025.12.09

高まる!管理会計の必然性「未来への投資」

私たち中小企業を取り巻くビジネス環境は、日々、目まぐるしく変化し続けています。日本経済を支える中小企業にとって、この環境変化に適応し、持続的に成長し続けることは喫緊の課題です。この課題解決のカギを握るのが「管理会計」です。

今回は、日本の経済発展の歴史を振り返り、管理会計の必要性を探り、未来に広がる可能性について考えてみたいと思います。

この記事のポイント
  • 管理会計で広がる未来の可能性を探ります

管理会計の歴史

日本の会計の歴史は、「財務会計」の重要性は多方面で議論されてきましたが、「管理会計」の重要性は議論されることが少なかったかもしれません。最近は、「管理会計」に関する書籍等も多く発刊され、経営における管理会計の重要性は高まっていると感じます。

また、昨今のクラウドやAIの進化により、管理会計の導入障壁は劇的に下がっています。管理会計は、大企業だけが取り組むツールではなく、中小企業も「管理会計に取り組むのは当たり前」という状況を作り出し、未来をデザインしていくことが可能になっています。

日本の経済発展と管理会計の不在

戦後~高度経済成長期

戦後、日本経済は驚異的なスピードで復興し、高度経済成長期を迎えました。この高度経済成長の時代の原動力と言えば、「大量生産」「大量消費」でした。そして、経営においては、「勘と根性」に依るところが大きかったのではないでしょうか。

市場の拡大

→市場全体が右肩上がりに拡大していた為、売上増加が多くの問題を覆い隠していました。

財務会計中心

→企業経営において、「会計」は、税務申告や株主・債権者への情報公開を目的とした財務会計が中心でした。意思決定に役立つ管理会計の考え方は、大手企業の一部に留まり、中小企業には浸透しませんでした。

どんぶり勘定

→経験や属人的なノウハウに頼る「どんぶり勘定」で経営判断を行い、コスト構造や採算性がブラックボックス化していました。

バブル崩壊と失われた30年

1990年代のバブル崩壊は、日本経済に大きな転換期をもたらしました。市場が成熟化し、グローバル競争は激しさを増し、人口減少の加速による国内市場の縮小は、従来の「勘と根性」で乗り切ってきた経営が通用しないことを突きつけました。

採算性の悪化

→価格競争が激化し、利益率の差が企業の存続を左右するようになりましたが、従来の会計システムでは、どの製品やサービス、どの顧客が利益を生み出しているかを正確に把握できませんでした。会計情報システムが整っていなかったのです。

意思決定の遅れ

→環境変化の対応が問われる中で、過去データに基づくコスト構造分析や将来予測が不十分であるため、新事業への投資や事業撤退などの経営判断が遅れ、企業の体力を削っていきました。

歴史的教訓

→「失われた30年」は、日本のすべての企業に、「コストと利益の正確な把握なしに市場の変化に対応することは不可能である」という教訓を与えました。それでもなお、中小企業の多くは管理会計を導入できず、環境変化への適応が遅れてしまいました。

中小企業における管理会計の現代的必要性

儲かる構造の可視化と改善

管理会計は、コスト計算ではなく、経営者が未来を意思決定するための羅針盤であるはずです。現代の中小企業にとって、管理会計は、企業の利益がどのように生まれてくるのかを分析し、可視化するツールであると言えます。

正確な原価計算

→材料費・人件費・間接費を正確に配布し、製品別・サービス別・部門別・顧客別等における採算性を把握できます。

変動費と固定費の分析(CVP分析)

→利益計画策定に必要不可欠な損益分岐点を明らかにし、目標利益達成に必要な売上高、価格改定やコスト削減が利益に与える影響をシミュレーションすることができます。

改善点の特定

→採算性の低い事業や製品を特定し、撤退・改善・価格交渉の客観的な根拠を提供します。

意思決定支援

環境変化が激しい時代において、競争優位性を確保するためには、意思決定のスピードは必要不可欠な要素の一つです。

予実管理

→過去の実績を見るだけでなく、将来の目標(予算)を設定し、実績との差異を早期に分析することが大切です。この「差異分析」を行うことによって、課題を察知して、対策を講じることが可能になります。

設備投資判断(資本予算)

→工場建設や新しい設備の導入など、長期的な投資を行う場合、将来のキャッシュ・フローを予測し、投資効率の評価ができます。

外部環境への対応

→原材料価格の高騰や人件費の上昇といった外部要因に対し、管理会計データに基づいて、「いくらまでならコスト増を吸収できるか」「どれくらい価格転嫁するべきか」をデータに基づいた判断が可能になります。

未来への可能性:管理会計が切り開く持続的成長

日本経済は、DX(デジタルトランスフォーメーション)とグローバル化の波に直面しています。その中で、管理会計は中小企業の持続的な成長を担う最重要ツールになっていきます。

DXとの融合による進化

クラウド型会計システムやERP(統合基幹業務システム)の進化により、管理会計は容易に、かつ、高度になっています。

リアルタイムな経営情報

→データを手作業で集計する時代は終わり、リアルタイムで部門別、製品別の利益情報やキャッシュ・フローを把握できるようになっています。これにより、週単位・日単位での意思決定も可能になってきています。

AI・ビッグデータの活用

→蓄積された管理会計データ(原価・売上・工数など)をAIが分析することによって、精度の高い需要予測やリスク予測が可能になりつつあります。中小企業でも大手企業と遜色のないデータ分析に基づく戦略立案が実現できるようになるでしょう。

事業承継と経営力の底上げ

少子高齢化が進む日本において、中小企業の事業承継は大きな課題となっています。管理会計に取り組むことで、先代経営者の「勘」に頼っていた経営ノウハウやコスト感覚が、客観的なデータとして明文化されていきます。これにより、後継者などへの円滑な経営権限の委譲を可能にし、属人性の排除と経営力の底上げが期待できます。

中小企業が持続的に成長していくためには、「過去の利益」を計算する財務会計から「未来の利益」を作り出す管理会計へ軸足を移していくことが必要不可欠です。自社の「設ける力」を最大限に引き出し、能動的に変化を選択し、未来を先取りしていくことこそが、管理会計が日本の未来を切り開く中小企業に変化をもたらす最大の価値なのではないでしょうか。
社長!未来を本気で考えるなら、まず、「管理会計」に取り組むことから始めてみませんか!

この記事を執筆したのはです
Imai
パートナー事業部
マネージャー
税理士・CFP
上級経営会計専門家
大学卒業後、会計事務所・航空機部品を扱う商社勤務を経て、2007年に税理士法人横浜総合事務所に入社。以来、「100%真っすぐ誠実に」をモットーとして税務会計をベースに個人事業主・中小企業の経営支援に従事。経営者の「想い」を「見える化」し「実現」していくために経営計画策定支援にも力を入れています。変化の激しい時代においても中小企業の発展のために精進して参ります。
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