経営デザインシートで考える「これからの事業承継」
現代のビジネス環境は、急速な技術革新、顧客ニーズの多様化、そしてグローバルな競争の激化によって、かつてないほどの変化を遂げています。こうした環境においては、従来の成功モデルが必ずしも通用せず、未来を見据えた新たな事業戦略が求められています。そのためには、自社の価値(強み)を再認識し、長期的なビジョンを明確にすることが不可欠です。特に、事業承継を考える際には、次世代にどのような事業を引き継いでいくのか、その価値や方向性を明確にすることが重要です。ここで役立つのが「経営デザインシート」です。今回は経営デザインシートについて、ご説明させていただきます。
※今回のコラムの資料は、すべて内閣府が出典です。
※経営デザインシートの雛型や詳細な説明はこちらをご確認ください。
- 経営デザインシートの目的や使い方がわかります。
経営デザインシートとは?

経営デザインシートは、自社の事業を長期的な視点で捉え、その価値を可視化するためのフレームワークです。単なる業績分析や短期的な利益追求にとどまらず、経営者が持つビジョン、価値観、強みを整理し、将来に向けた持続的な成長を描くためのツールです。事業承継の文脈では、単なる株式や資産の移転にとどまらず、経営理念や独自の強み、次世代へのビジョンをどのように引き継ぐか、もしくは後継者が創造するかが重要なテーマとなります。
下記に記載している目的などは、内閣府から公表されているものになります。
- ひとことでいうと
- 将来を構想するための思考補助ツール
- 100文字でいうと
- 環境変化に耐え抜き持続的成長をするために、自社や事業の
- 存在意義を意識した上で、
- 「これまで」を把握し、
- 長期的な視点で「これから」の在りたい姿を構想する。
- それに向けて今から何をすべきか戦略を策定する。
- 環境変化に耐え抜き持続的成長をするために、自社や事業の
- 目的
- 環境変化を見据え、自社や事業の「これまでの」の理解に基づき、「これから」を構想
- 特徴
- 1枚で全体を俯瞰できる
- 時間軸を意識できる(「これまで」と「これから」)
- 想いを記載できる(「自社の目的・特徴」、「事業概要」、「価値」など)
- 欄が限られているので、大切なことしか書けない(大切な部分の明確化)
- 「資源」と「ビジネスモデル」と「価値」の関係性を意識しやすい
経営デザインシート作成のポイント

未来からバックキャストして考える
経営デザインシートは、順番にこだわりすぎずに、書けるところから書いていくことが一つのポイントですが、もう一つ大切にしてほしいポイントがあります。それは、過去からの延長線上で考えるのではなく、未来からバックキャストで考えることです。特に、これからの事業承継は「事業創造」の視点が重要になります(その理由は別のコラムでお話します)。その際に、過去の延長から考えていては、単なる引継ぎになるだけで、真の事業承継を実現することはできません。経営は逆算です。
時間軸を意識して作成する(短期と長期)
とはいえ、バックキャストで考えるとしても、経営デザインシートの作成を進める上では、経営計画同様、やはり「現状→将来」の順番に進めていくほうがやりやすいと思います。
1.まずは自社を見つめなおす(自社を知る)
経営デザインシートの第一歩は、自社の価値を改めて理解することです。これは単に財務的な要素だけでなく、組織文化、ブランド力、顧客基盤、技術力といった無形資産も含みます。事業承継においては、次世代がこれらの強みを理解し、それを基盤に事業を発展させることが重要です。例えば、以下の視点が参考になります。
- 独自技術やノウハウ
- 長年の信頼関係と顧客基盤
- 柔軟な組織文化や人材力
- 地域密着型のサービスやネットワーク
これらの強みは、競合他社にはない価値を生み出し、事業の差別化要因として大きな武器になります。また、自社の強みを再確認する過程で、これまで気づかなかった潜在的な価値や新たな事業機会を発見することも少なくありません。
2.長期的なビジョンの明確化(将来どうありたいか?)
次に重要なのが、長期的なビジョンを明確にすることです。事業承継においては、単に経営権を次世代に移譲するだけでなく、企業が目指すべき理想の姿や価値をどのように引き継ぐかが鍵となります。短期的な利益にとらわれず、企業が目指すべき理想の姿を描くことは、全社的な方向性を定めるうえで欠かせません。例えば、下記のような事項です。
- 10年後に目指す姿は何か?(どうありたいか?)
- 社会に対してどのような価値を提供するのか?
- どのような組織文化を醸成するのか?
- 次世代経営者がどのようなリーダーシップを発揮するべきか?
まとめ:未来の準備は今から始める
経営デザインシートは、自社の強みを再発見し、未来を見据えた戦略を描くための強力なツールです。事業承継のプロセスにおいても、その価値は非常に大きく、次世代へのスムーズなバトンタッチを実現するために欠かせない存在です。これを活用することで、変化の激しい時代においても、持続的な成長を実現し、次世代に誇れる事業を築くことが可能となります。今こそ、自社の可能性を最大限に引き出し、未来に向けた一歩を踏み出しましょう。
横浜総合事務所では、事業承継の専門チームを中心として事業承継に関する各種ご支援をさせていただいております。事業承継に関する疑問点や質問などございましたら遠慮なくご連絡ください。