マーケティング戦略CX(カスタマーエクスペリエンス)考える!
経営コンサルタントを名乗る実務のたたき上げ中年オヤジ(50歳)が、経営の原理原則を学ぶべくMBA(大学院)に通うことを決意し、日々の学びと気づきを不定期でつぶやきます。
- MBA(経営学修士)での学びを手軽に追体験できます
第14回目のテーマは…CX カスタマーエクスペリエンスを考える!
マーケティングを学ぶ基礎知識編に突入し、STP分析・4P/4Cについてお伝えしました。
お客様に自社の製品・サービスを手に取ってもらうためには、生産者目線(プロダクトアウト)だけではなく、利用者目線(マーケットイン)の発想が必要です。
顧客目線を深堀する中で、顧客は購入前、あるいは購入後、何を感じるのか?
そんな顧客体験価値(感情的な価値)に着目したマーケティング視点がCXです。
今回はマーケティング知識のトレンドでもある、CX:カスタマーエクスペリエンス(顧客体験価値)について考えたいと思います。
1.カスタマーエクスペリエンスの定義と意義
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客が企業やブランドと出会い、コミュニケーションを重ね、購買や利用後に至るまでのあらゆる接点(タッチポイント)で得る「体験」の総和を指します。これは単なる「顧客満足度」の延長ではなく、感情や価値観、ブランド印象までも含む広範な概念を指しています。
近年、製品やサービスの差別化が困難になる一方で、顧客の選択基準は機能や価格よりも情緒的な「体験価値」へとシフトしています。その背景には、SNSや口コミサイトの普及により、顧客が体験を他者と瞬時に共有できる環境が整ったことがあります。良好なCXは、リピート率や顧客ロイヤルティの向上をもたらし、ひいてはLTV(顧客生涯価値)の最大化につながるため、企業にとって必須の戦略要素となっています。一方で悪いCXは、商品・サービスの毀損につながるのです。
CXを言い換えるならば、お客様が幸福を感じるブランド体験活動全体といえるでしょうか。
2.カスタマーエクスペリエンスの構成要素とは?
CXは多層的に構成されますが、一般的に「認知価値」「機能的価値」「情緒的価値」「経済的価値」「社会的価値」の5つで構成されます。
認知価値 |
顧客がブランドの存在を知り、興味や関心を抱くこと。 例えば、Webサイトや広告、SNSを通じてブランドを知る体験などが含まれます。 |
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機能的価値 |
顧客が製品やサービスの機能や性能、利便性に満足すること。 例えば、使いやすいWebサイト、高性能な製品、スムーズな取引などが含まれます。 |
情緒的価値 |
顧客がブランドに対して好感や愛着を抱くこと。 例えば、親切な接客、デザインの魅力、ブランドストーリーへの共感などが含まれます。 |
経済的価値 |
顧客が支払う対価に見合った価値を享受できると感じること。 例えば、適切な価格設定、お得なキャンペーン、高品質な製品などが含まれます。 |
社会的価値 |
顧客がブランドを通じて社会や環境に貢献できると実感すること。 例えば、環境に配慮した製品、社会貢献活動へのブランドを通じた参加などが含まれます。 |
これら5つを統合的に設計・提案することで、顧客の心・頭・体のすべてに訴えかける体験が実現できます。
3.CXの実践事例
ここまでで、カスタマーエクスペリエンスの漠然としたイメージは持てたのではないかと…。
実際にカスタマーエクスペリエンスの概念を活用して、顧客との関係構築、商品開発へと活用している企業の事例を紹介したいと思います。

出典:株式会社ハルメク
ご紹介する企業は…ハルメクグループ
ハルメクは、ハルメク世代(主に50代からの女性)を対象とした出版、通信販売、店舗、講座イベントなどの各種事業を行っています。自分にあったおしゃれとは何か。もっと日々の暮らしを豊かにするために何が必要か。健康とはどういう状態で、どう保っていくのか。誰かと誰かがつながることを、媒介できないか。日々そうしたことを考えながら、情報、商品、そして場を提供していきます。
出典:株式会社ハルメク
シニア女性向けライフスタイルメディア「ハルメク」のカスタマーエクスペリエンス(CX)戦略を以下のように整理してみました。
1.コンテンツ設計
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ターゲット理解
- 主に50代以上の女性読者が抱える「健康」「趣味」「生きがい」「お金」の悩みを徹底的にリサーチ
- アンケートや読者投稿を通じて、リアルな声を企画に反映
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価値提供型の記事
- 実践的なノウハウ(体操レシピ、節約術、旅プランなど)を“すぐ試せる”形で提供
- 専門家インタビューやストーリー仕立ての読み物で、知識以上の“共感体験”を演出
2.マルチチャネルでの一貫体験
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紙⾯+デジタルのクロスオファー
- 月刊誌「ハルメク」購読特典として、会員サイトへのログインIDを発行
- 紙面記事の延長として、オンライン動画コンテンツやウェビナーを提供
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OMO(Online Merges with Offline)施策
- 紙面にQRコードを掲載し、ECショップやイベント申込ページへスムーズ誘導
- 実店舗(イベント会場)でのワークショップ参加後に、誌面やECで関連グッズを案内
3.コミュニティづくりと双方向コミュニケーション
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読者コミュニティ「ハルメクCLUB」
- 会員同士の交流フォーラム、サークル(読書会、ハンドメイド教室など)を運営
- 編集部と読者が直接やり取りできる「読者座談会」を定期開催
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UGC(User Generated Content)の活用
- 読者の体験レポートや対談企画を誌面・Webに掲載し、他の読者の共感を喚起
- SNSハッシュタグキャンペーンで、リアルな声を集めて拡散
4.パーソナライズとロイヤルティ向上
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定期購読・サブスク特典
- 長期契約者向けの割引、限定イベント招待、オリジナルグッズプレゼントなどで継続率アップ
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フィードバックループの確立
- 定期的な顧客満足度調査によるKPI管理
- 調査結果を編集会議や商品企画に反映し、改善サイクルを高速化
ハルメクのCXは、エンパシー(共感)を軸にしたコンテンツ設計と、紙⾯+デジタル+リアルイベントをクロスチャネルで連携させることで、「心に響く情報提供」「居場所としてのコミュニティ体験」「個々に寄り添うパーソナライズ」を実現しています。この一貫した顧客体験が、50代以上女性のロイヤルティ向上につながっているといえます。
まずは、自社の商品・サービスのCXの流れを整理することからスタートしてみては?
社長!本当に経営、できていますか?