税理士法人 横浜総合事務所
株式会社横浜総合マネジメント
株式会社横浜総合フィナンシャル
株式会社横浜総合アカウンティング
株式会社横浜総合エクスペリエンス

Column

2025.10.21

M&Aは「買ってから」が本番:PMIの要点と進め方

市場の変化が速い今、M&Aは買って終わりではありません。むしろ本番はクロージングの後、2社をどう一体化して価値を生み出すか。現場では、人やしくみの違いが判断の遅れや顧客対応のばらつきを生みがちです。狙いを外さず、混乱を最小限にし、早く成果を見せる——この3点を実現する手法がPMIです。今回は、PMIの概要や重要性について解説します。

この記事のポイント
  • PMI(Post Merger Integration)についての基本的な内容が分かります。

PMI(Post Merger Integration)の概要・役割・重要性

PMIの基本と役割
PMIというのはPost Merger Integrationを略したもので、M&A後に2社を「本当に一つとして機能させる」取り組みです。対象は、人・組織・仕事のやり方・IT・財務・文化まで幅広く、ここでの意思決定と実行が、将来の売上成長やコスト削減、顧客満足に直結します。M&Aはゴールではなくスタートです。これを前提として投資の狙い(新市場の獲得、製品ライン強化、仕入れ力の向上など)を現場の行動に落とすのがPMIです。主に必要となる統合は3つです。

1) 経営統合

M&A後の新たな経営方針を明確化し、社内外の関係者への影響を緩和する対策を検討します。

2) 業務統合

譲渡側の業務運営を把握し、引継ぎと統合作業を着実に実施します。

3) 信頼関係構築

譲渡側経営者・従業員・取引先との信頼関係を構築し、協力を得られる関係性を築きます。

成果を出すためのポイント

戦略・ビジョンの明確化

  • 買収の目的(シナジー創出、事業拡大、技術獲得など)を明確にし、全社で共有する
  • PMI開始前に「統合後の理想状態」を定義する
  • 短期・中期・長期の統合ロードマップを作成する
  • 経営層から現場まで、ビジョンと方向性を一貫して伝達する

組織・人材統合

  • 組織文化の違いを把握し、対話やワークショップを通じて相互理解を促進
  • キーパーソン(特に離職リスクの高い人材)を早期に特定・フォロー
  • 組織構造・役職・権限を明確化し、混乱を防ぐ
  • 統合初期から人事制度(評価・報酬・昇進など)の方向性を提示

コミュニケーション

  • PMI専用のコミュニケーション計画(頻度・チャネル・責任者)を設計
  • 社内向けFAQや定例説明会で不安や疑問を可視化・解消
  • 経営陣が現場に足を運び、「統合の目的」を自ら発信
  • 情報発信の一貫性とスピードを重視(噂や誤解を最小化)

業務プロセス・システム統合

  • 両社の業務プロセスを可視化し、重複・非効率を早期に洗い出す
  • 優先度を設定して段階的に統合(「すぐ統合すべき」「しばらく併存」など)
  • I基幹システム統合はリスク管理を徹底し、業務停止を防ぐ

財務・シナジー管理

  • シナジー効果(コスト削減、売上拡大など)の定量目標を設定
  • 実績を定期的にモニタリングし、達成度を見える化する
  • 統合のコストと成果を定期的に検証する

ガバナンス・意思決定体制

  • PMI推進委員会などの専任組織を設置し、責任と権限を明確化
  • 意思決定スピードを上げるため、権限移譲を適切に実施
  • 重要課題については迅速に共有・判断できる体制を整える

ここまでがPMI全体の要点です。次に、初期の不安と混乱を抑えつつ、早期に成果を出すための実行計画である「100日プラン」に焦点を当て、その役割と進め方を示します。

100日プランとは

100日プランは、M&Aの成約直後から約3か月の間に実施する具体的な統合行動計画で、初日から業務を止めない仕組みを確保しつつ、緊急度の高い課題への対処と、長期統合を支える体制・ルール・KPIの整備を集中的に進めるものです。初期に方針と成果を明確に示すことで、従業員や顧客の不安と混乱を抑え、シナジー発生のスピードを高めます。100日はあくまで目安であり、実情に応じて期間や内容を柔軟に調整します。

進め方の目安(一例)

合意直後~

まずPMI推進体制を立ち上げ、責任者と主要メンバーを任命します。M&Aの目的や統合方針を全社に共有し、従業員との信頼関係を早期に築くことが重要です。また、買収時に想定したシナジーや前提条件を再確認し、リスクを洗い出したうえで、100日プランの骨子と優先課題を策定します。

0~30日(土台づくり)

意思決定体制と報告ラインを明確にし、 各部門での統合KPIを設定して活動の方向性を統一します。 同時に、組織構造と主要人材の配置を確定し、業務プロセス・IT・財務構造の現状分析を行います。

31~60日(優先課題に着手)

優先度の高い領域(営業、管理、調達など)で統合施策を本格的に実行します。合わせて、顧客・財務・人事などのデータ統合設計を進め、暫定的な運用を開始します。 課題が発生した場合には、責任者と期限を明確にして迅速に対応することで、 組織全体のスピードと一体感を維持します。

61~100日(成果の可視化))

統合によるコスト削減や売上拡大などの効果を数値で検証し、統合初期の成果を整理します。各部門の実績をレビューし、成功事例を社内に共有することで、次のフェーズへの前向きな流れをつくります。
さらに、「次の100日プラン」を策定し、中長期的なテーマ(文化融合、ブランド統一、業務改善など)へ移行します。

PMIの質はM&Aの成果を左右します。初期の100日で「止めない・早く見せる・次につなぐ」を徹底できれば、その後の統合は格段に進めやすくなります。狙いを明確に、KPIで進捗を可視化し、学びを次の100日に反映する——このサイクルを粘り強く回すことが、シナジーを確実な結果へ変える最短ルートです。

PMIの設計や実行でお悩みの際は、ぜひ弊社までご相談ください。

この記事を執筆したのはです
Saito
Team事業承継・税務支援
シニアスタッフ
1995年横浜生まれ。大学卒業後、2018年に新卒で税理士法人横浜総合事務所に入社。
入社後2年弱は所内の製造部門であるTeam会計税務支援に勤務。
2020年より現在のTeam戦略経営に異動し、中小企業・個人事業主を中心に60社ほどのお客様を担当させていただいています。
今後も経営者の方の夢の実現をサポートさせていただくと共に、自分自身も日々成長を続けていきます。
TEAMyoko-soは、
経営者様の手となり足となりブレーンとなり、
最も身近なビジネスパートナーで
あり続けます。
045-641-2505

(月~金 9:00~18:00)