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Column

2025.06.18

マーケティング戦略 ブランド価値を意識した経営とは?

経営コンサルタントを名乗る実務のたたき上げ中年オヤジ(50歳)が、経営の原理原則を学ぶべくMBA(大学院)に通うことを決意し、日々の学びと気づきを不定期でつぶやきます。

この記事のポイント
  • MBA(経営学修士)での学びを手軽に追体験できます

第15回目のテーマは…ブランド価値を意識した経営とは?

前回までのコラムでマーケティングに関する基本的なフレームはお伝えしてきました。今回はマーケティングの締めとして、マーケティング戦略として【ブランド経営】について考えてみたいと思います。

そもそもブランド(Brand)の語源は、古代スカンジナビア語の、所有する自分の牛を区分するための【焼き印】=Burned(焼き印をつける)に由来します。
現代ではこの概念がロゴへと変化・拡大し、商品や企業が持つ 「信頼」「個性」「イメージ」を含むものとして使われています。

牛のマーク

つまり単なるロゴやネーミングではなく、企業価値・顧客体験・市場での信頼構築を包括的に表すのが【ブランド】といえます。
誰しもが【松坂牛】と聞いた時、高品質・高価格の最高級和牛をイメージするのは、まさにブランドがもつ機能・効果といえます。
この機能・効果をマネジメントするのがブランド経営です。

牛肉

以下に、ブランド経営を構造的に説明するための「3つの柱」を解説していきます。

1.ブランドエッセンス(Brand Essence)とは?

ブランドの核心を一言で表した「理念的ことば」です。
ロゴやスローガンよりも深く、そのブランドが持つ本質的価値や感情的なつながりを象徴します。例えるなら、ブランドの【DNA・人格】です。
有名なブランドエッセンスの例はスターバックスの【Third Place(第3の場所)】。家庭を出て、職場へと向かう前、または一日の仕事を終えた後、一杯のカップを手に、友人たちと雑談しながら寛ぐ場。堅苦しくなく、それでいて上質な空間でコーヒーの味をお客様に伝え、広めていくことを目標としています。
その他の事例としてはユニクロの【Life Wear】も有名ですね。
ブランドエッセンスを構築する際の視点としては、次の3要素を整理し、ブランドがターゲット層に提供する価値の本質を見極めます。
※例はスタバ

  1. 機能的価値(例:美味しい・パーソナルスペースの広さ…品質・安全)
  2. 情緒的価値(例:スタッフの接客・店内の快適さ…安心・誇り)
  3. 象徴的価値(例:上質な暮らし…ライフスタイル・価値観の表現)

ブランドエッセンスは、企業や商品の「存在理由」を感情で語る最もシンプルな表現であり、全てのブランド活動の“軸”となる言葉です。

2.ブランド・アイデンティティ(Brand Identity)とは?

ブランドアイデンティティとは、「自分たちのブランドを、どう認識されたいか」を意図的に設計した姿のことです。視覚、言語、行動などあらゆる表現を通して、企業や製品の“らしさ”を確立するもの「ブランドが外部に向けて示す自己像」であり、顧客や社会に対してどのように見られたいかを戦略的にデザインしたもの。

ブランドアイデンティティの主な構成要素(5つ)

要素 説明
1.ミッション・ビジョン ブランドの存在理由、社会への約束
2.コアバリュー ブランドが大切にする価値観
3.パーソナリティ ブランドの性格
4.VI ビジュアル・アイデンティティ:ロゴ・色・フォントなどデザイン体系
5.シンボル/ストーリー 歴史、由来、エピソード

ブランドアイデンティティを設計する目的は、以下の通りです。

  • ブランドの一貫性を保つ(広告・商品・接客がバラバラにならない)
  • 競合との違いを明確化する
  • 社員の判断基準を統一する(社内にも浸透)
  • 顧客との信頼関係を構築する

スターバックスのブランドアイデンティティを仮にあてはめた場合としては

ミッション・ビジョン 一杯のコーヒーからつながるコミュニティ(第3の場所)
コアバリュー 察する・つながる・応える
パーソナリティ 都会的、洗練されている
VI ロゴ:ギリシャ神話の人魚セイレンをモチーフ。コーヒーで魅了する
シンボル/ストーリー シアトル発のエスプレッソ

ブランドアイデンティティを明確にすることで、一貫したブランド構築が可能です。【らしさ】を見つけ、磨きあげることで、場当たり的なマーケティング戦略を抑制し、社内外を通じて長期的な信頼の土台構築となります。

3.社内浸透とエンゲージメントの効果は?

最後はブランドの持つ社内にむけた効果を考えてみます。
ブランド経営において「社内浸透とエンゲージメント」は、単なる補助的な要素ではなく、ブランド価値を持続的に実現・体現するための根幹です。以下にその意義・方法・効果を整理します。

社内浸透の意義
社員一人ひとりがブランドの価値や方向性を深く理解し、自らの行動で体現すること。

ブランドを「自分ごと化」することで、外部への一貫したブランド体験が提供されるようになる。

項目 内容
一貫性のある顧客体験の実現 社員がブランドの価値を理解していなければ、現場での接客・営業・サービスに一貫性が出ない
社員の判断基準の明確化 迷ったときの「よりどころ」がブランド価値にあると、ブレのない意思決定ができる
エンゲージメント(共鳴・貢献意欲)の向上 ブランドと自分の価値観が重なると、働くモチベーションが上がり、離職防止にもつながる

ブランド浸透のステップ(基本プロセス)

具体的にブランド価値を社内浸透させる際には、以下のようなステップで考えると良いでしょう。その際、社員を中心にプロジェクトチームを設計し、主体的に取り組む環境を整備することが重要です。

ステップ 内容
① ブランド理念・価値の明文化 ビジョン・ミッション・バリュー・ブランドエッセンスをわかりやすく定義
② 社内向けコミュニケーション 社員向け動画、冊子、ブランドブック、経営者メッセージの発信
③ 社内教育・体験化 研修・ワークショップ・ケーススタディによる理解の深化
④ 評価制度・行動指針と連動 ブランドを体現した行動に対して評価・表彰する制度設計
⑤ 自発的な共有文化の醸成 ブランド価値を自ら語れる社内アンバサダーの育成、現場からの声の吸い上げ

例:スターバックスの社内浸透

  • バリスタ一人ひとりが「サードプレイス(第3の場所)」の提供者であるという意識を持つ
  • 接客マニュアルではなく「パートナーとしての共感・共鳴」が基盤
  • 採用時点からブランドとの共鳴を重視し、継続的に育成

成果・メリット

ブランド価値が社内にひろがり、共感が生まれる組織の特徴は以下の通りです

成果 内容
顧客ロイヤルティの向上 社員の行動がブランド価値と一致することで、顧客が一貫した満足・安心を感じやすい
企業文化の強化 ブランドが「文化」となり、採用・育成・組織運営にも良い影響を与える
ブランドの持続性 広告やロゴに頼らず、人の行動でブランドが表現され続ける

ブランドは経営者や広告がつくるものではなく、社員一人ひとりの“行動”によって社会に体現されるもの。だからこそ、「社内浸透とエンゲージメント」はブランド価値経営の最重要領域の一つです。

経営の神様、P・Fドラッカーは「マーケティングの目的は販売を不要にすること」と述べ、顧客の欲求を深く理解し、商品やサービスが自然に選ばれる状態を目指すべきだと説きました。この視点から見ると、ブランド価値とは単なる認知度ではなく、顧客の信頼と共感を獲得し、選ばれ続ける理由そのものです。顧客視点で一貫した価値提供を行い、期待を超える体験を積み重ねることで、ブランドは「独自の存在」へと進化します。ブランド価値は企業の存在意義と顧客の真のニーズを結びつける戦略資産といえます。

まずは、自社の商品・サービスのブランド定義からスタートしてみては?
社長!本当に経営、できていますか?

この記事を執筆したのはです
栃倉 恒敬 (Tsunetaka Tochikura)
(株)横浜総合マネジメント
代表取締役
上級経営会計専門家
大学卒業後、大手食品会社にて製造から物流、企画、営業までを経験。28歳で財務会計知識の習得を目指し泉会計事務所(税理士法人横浜総合事務所)に入社。2008年㈱横浜総合マネジメントを社内起業にて設立。中小企業の成長、発展を支援するため経営計画の立案、運用を中心とする経営コンサルティング(未来会計)に従事し、2021年より代表取締役に就任。 新規事業立ち上げと、実家の家業を自ら事業承継したリアルな経験を活かし、お客様に寄り添う伴走型のコンサルティグを得意としています。 県内の同業と連携する(株)未来会計コンサルティングの役員など、顧問先の外部CFOも歴任。
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